先代が大切にしてきた庭を守ることを第一にして建替えた母屋。一番眺めの良いところにリビングを配置しました。外壁の黒い焼杉が新緑に栄え、昔からあったかのような佇まいを見せています。
敷地内に建つ御蔵や茶室、長屋の雰囲気を壊さないよう、和風大屋根のお住まいとしました。玄関戸にアクセントになる赤茶を塗装し、モダンな雰囲気をプラスしています。
設計より
W様とは共に先代からのお付き合いで、これまで何度となくお住まいやお蔵の補修等をさせていただき、かれこれ60年ほどのお付き合いになります。そのようなわけで、850坪に及ぶ広大な敷地の様子は熟知しているといっても過言ではありません。
先代は古い建物や庭園をとても大事にされている方でしたので、今回(代替わり後)の母屋の建替えにあたり、全体の景観を守りながら既存の庭を取り込むことを一番に考えて計画させていただきました。同時に、今まで母屋とつながっていたゲストハウス部分を離れとして独立させる改築工事も行わせていただきました。
新しい母屋は、建物の高さを低く抑え、まるで昔からそこにあったかのように建っています。主張しない大屋根のシンプルなデザインと外壁に使用した焼杉の黒は、緑の中で和の落ち着いた雰囲気を醸し出しています。メンテナンス性の良い外壁の焼杉はこの先何十年も建物をしっかりと守ってくれることでしょう。
間取りの方はいたってシンプルですが、住まいの中心となるLDKに個室から家族が集まってくるイメージです。吹抜け・勾配天井のリビングは、庭を眺めるためにベストな位置に配置し、家族が心地よく過ごせて、楽しく料理ができる空間になるでしょう。家事動線の要となる水回りはそれぞれ十分な広さをとり、無駄のない動線としたつもりです。
北側に配置された3m×5mのバルコニーは大久保の谷間が望める景観のよい場所です。夏には町内の花火を間近に見ることができます。このバルコニーの下は、サービスヤードです。デッキ付きで雨に濡れない便利な空間です。BBQパーティーにも最適です。
最後に、この新しい母屋が年月を重ねていく中で敷地内の他5つの建物とも調和し馴染み、大切に住み継いでいただけることを期待します。